体験談

私のアル中体験記 こんなふうに飲んできた(8)

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若さを飲み潰す 第3章

当時、どれくらいの量のアルコールを飲んでいたのか思い出してみます。

…と思ったのですが、さすがに30年以上も昔のことで、何をどれくらい、という具体的なものと量を思い出せません。毎日ビールか缶チューハイは「その日のかけつけ一杯」として飲んで、あとはジンかウイスキーを飲んでいたと思います。やはり700~750mlのフルボトルを4分の1くらいペロッと飲んでいたのは間違いありません。休みの日はもっと早い時間から飲み出すので、普段の倍くらいの量を飲んでいたでしょう。その頃は、まだ連続飲酒が当たり前というほどではなく、その後、飲酒量はまだまだ増えていきます。1日も休むことなく飲み続けて、アルコールが24時間、体から抜けなくなっていました。そういう状態が、私の場合15年間続いたわけです。

さて、新卒で入社した会社を辞めてからの話をしていきたいと思います。
一応、退職する前に次の就職先を決めていました。個別指導の学習塾の、飛び込みの電話営業の仕事です。決め方も適当で、新聞に載っていた小さい求人広告を見て、面接に行ったら、簡単に採用されたので決めてしまいました。この辺りも、本当にダメなのですが、何も考えず、とにかく今がしんどくて仕方なかったので飛びついたんですね。営業なので固定給に加えて歩合給がつきますし「稼げるかも」みたいな。むちゃくちゃ安直な考えです。

実際に入社して働いてみると、すぐ絶望しました。朝から晩まで、その会社が用意した…多分、名簿屋から買ってきた…名簿に従って、飛び込みで電話をかけて営業をするのです。その職場には同じ仕事をしてる人が5、6人いたと記憶しています。まあ、職場の民度が低いというか、ごく短い間とはいえお世話になったのであまり悪く言うのもどうかと思いますが、吹き溜まりというか…表現にこまるのですが、大変なところでした。人心が荒廃しているというか。もともとがそういう人たちが集まってきていたのかもしれませんが、朝から晩まで営業の電話をかけていると、普通に人間の心って荒れてきて当然かな、という気もします。大概断られますしね。ああいう仕事をやったことがある方は、よくお分かりになると思います。どうしても、常にとげとげしい感じがするし、別にサボっているわけでなくても、少しでも電話をかけるペースが落ちると、叱責されたりとか。あと、やはりいじめがありました。アポ取りができない人は、露骨に、出ていけよがしな扱いを受けます。それまで恵まれた環境で仕事をしていた私にとっては驚きの文化というか、社風でした。

「ここ、ダメだな」とすぐに分かりました。仕事そのものは、すげなく断られるのには慣れるし、営業のノウハウはやっていけば少しずつ覚えていきますが、職場の雰囲気が耐え難く、結局、社会保険の手続きを始める前、入って1か月少々で辞めることにしました。

人生が下り坂になっているときには、よくあることかもしれません。「状況を改善しよう」として何かやると、それが全部、滑ってしまう。
悪い結果を受けて、あらゆる状況がますます悪くなっていく…私の酒の問題も悪くなっていくし、いわゆる悪循環というやつです。
そのとき住んでいたのは、東京都北区の下町でした。6畳一間の1K。家賃が5万円で、管理費が3000円だったと記憶しています。3階建てのアパートの3階の角部屋で、古いタイプのアパートですよね、洗濯機は室外で。お風呂はシャワーがなくて、浴槽に溜めたお湯で髪も体も洗うタイプのものでした。JRの駅からは歩いて15分以上はかかりましたけれども、交通の便の良いところで、とても暮らしやすい町だったと思います。ただ、駅から帰宅する途中には、繁華街がありまして、ときどき危ない目に遭いました。帰宅が遅くなるとき…特にアルコールが入った状態で夜遅く帰宅するときに、男性に「どっか、飲みに行こうよ」という感じで誘われることがありました。あるときは、腕を掴まれて振り払ったときに軽く怪我したのか、翌朝、起きたら、服に血がついていたことがありました。私も酔っていたので、はっきりと何があったのかということは覚えていません。

今から思うと、本当に危ないことをしていたと思います。酔っ払った状態で、他にも飲んでる人がたくさんいるような場所を歩いて帰るわけですから。怪我をしたときは断りましたが、飲みに誘われてそのまま一緒に飲みに行ったこともあります。

アルコール依存症はどんどん進行していく病気です。たとえ恵まれた、安全な状況で生活していたとしても、飲み方は次第に荒れて悪くなっていきます。量が増え、酔い方が悪くなり、確実に進んでいくものなんですね。けれども、恵まれた状況でずっと飲み続ける人っていうのは少数派でして、ほとんどの場合、病気が進行するにつれ、次第に生活の状況は悪化します。転職の失敗であったり、酔った上でのトラブル…たとえば怪我をしたり、盗難にあったり、犯罪に巻き込まれたり、もちろん健康を害したり。あと、必ずつきまとうのが、お金がなくなっていくこと。経済的な困窮ですね。そういうことでどんどん転げ落ちるようにして生活状況が悪化する、ますます飲むようになる…そうやって、悪い方に転げ落ちていきます。私もそんな状況に、はまりかけていました。

学習塾の仕事を辞め、リーズナブルといえど、家賃5万3000円を払って一人暮らしをしていると、手持ちのお金が減っていきます。さすがの私も先行きに不安を感じ、母にご相談をしましたところ、母親は「帰ってこい」と言ってくれましたので、私としては不本意でしたが、帰ることにしました。今から思えばありがたいことだったのですが、当時の私はまったくその辺は意に介しませんでした。「嫌だなあ」が本心です。父親とは学生時代に家を出てから何年も口をきいていなかったんですけれども、私ときたら詫びもせず、なんとなく、実家に戻りました。やることなすこと、26歳の大人としては、まったくなっていません。実家に戻るときも荷物の整理が終わっていなくて、冷蔵庫とか、洗濯機とかも持って帰って迷惑かけました。内心、仕事が見つかったらすぐに実家を出てやろうと思っていたんですね。アルコール依存症になると、あらゆることがしっかりできなくなって、筋の通った考え方もできなくなり、人に迷惑をかけることもなんとも思わなくなっていきます。そのときの私も「酒が飲みたいんだから仕方ない」というのが本心でした。その本心も自分では認めていませんでしたが。

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