第5回  「笑窪」(短編集「古惑仔(チンピラ)」より)

タイトル  「笑窪」(短編集「古惑仔(チンピラ)」より)
著者 馳星周(はせ せいしゅう)
出版社 徳間書店

(あらすじ)
主人公、阿藤良は板前。酒とギャンブルで身を持ち崩して、大久保の居酒屋で包丁をにぎっている。店の客が連れてきた、中国は広東からの出稼ぎ娘、メグと深い仲になった。メグは闇カジノのディーラー兼娼婦である。メグと闇カジノに深入りしていく彼に待っていた運命は・・・

(ひとこと)
著者の馳氏は、アルコール依存症という病気について詳しいわけでもなく、さしたる興味があるわけではないと思う。にもかかわらず、短い小説のなかで、アル中がぶっこわれていく様子をリアルに描いており、すごいと思った。主人公はあきらかに末期的アル中であり、ギャンブルにも対人関係にも問題がある。彼のもつ「自分が水槽や海の中でただよう海藻」というイメージは、アル中の意識にくり返し浮かぶイメージとして、共感できた。
馳星周氏といえば、デビュー作「不夜城」で、そのあまりの救いのなさ、暴力性、後味の悪さにびっくりさせられた。が、結局、他の作品もほとんど読んでしまった。今回、この短編を読んで、それがなぜだか、理解できた。
ところで、主人公の阿藤良は板前である。私も、何人かのアル中の板前さんと出会った。その後、包丁をにぎる世界に復帰して、アル中から回復した人の話は聞かない。それは、神業なのだ。しばらくは別の気楽な仕事をしながら自助グループに通って、何年かしてから復帰してほしい。そんな板さんがいる店なら、必ず食べに行くから。

・ スリップ防止度  ☆☆
・ 飲酒欲求発生度 ☆☆(メグの好物、「焼酎のお湯割り。梅干し入り」がうまそうだ)
・ 総合評価 ☆☆☆

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