体験談

私のアル中体験記 飲んでた頃と、飲まない今の長いいきさつ(5)

飲まない一日を繰り返す

アルコール中毒者のぴなこです。今回は、まず、 アルコール依存症の当事者としてアルコールを手放すようになるまでのところを、ざっとお話をしたいと思います。
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アルコールデイケアから少しずつ社会へ、自助グループへ(1)

その日の午後に、まず何をやったかというと、役所に行きました、 健康保険証を持ってなかったんです。前の仕事を辞めてからそういう手続きをしないまま実家に帰ってきていたので。

転出するほうの役所と転入するほうの役所で手続きをしまして、どちらの役所だったか忘れましたが、公衆電話から、午前中に診てもらったクリニックで教わった…自分が入院する予定の病院に電話をしました。アルコールデイケアの見学の申し込みをして、次の日から行くことになりました。その日は飲みませんでした。

翌日、デイケアに行きましたら…。今でもよく覚えてるんですけれども、土曜日だったので、午前中のプログラムは調理。みんなで調理したものが、その日の昼食になります。メニューも覚えています。鶏肉のトマトソース煮と、お味噌汁と、ご飯。私も食べさせてもらいました。
「みんな、この人たちアル中なのか」とか思ってですね…いや、お前もだって(笑)。食器を洗うのを手伝いました。その日も飲みませんでした。

その翌日は日曜日で、デイケアは休みなんですね。…なので、なんかしたいなと思って、病院かデイケアでもらったAAと断酒会の日程表を見て、どこかに出てみようと思いました。AAの日程表って、慣れないとわかりにくいんですよ。ミーティングが何種類かあって「オ」とか「ク」とか書いてあり…。「オ」はオープンミーティング(だれでも参加できる)、「ク」はクローズドミーティング(当事者のみ参加できる)ですね。…そのときはなんだかよくわからなかったので、とりあえず、断酒会の方に行ってみることにしました。日曜日の昼間に開催されていたN断酒新生会の例会です。そこでは、…今はあんまりやってないと思うんですけど、その頃の断酒会っていうのは、お菓子が出るんですね。断酒会員の奥さん方がお茶を入れてくださって、駄菓子を1人分ずつビニール袋に詰めてくれて。その例会場では、参加者の前のテーブルの上に、半紙を半分にしたやつが敷かれて、その上に、バナナとお菓子が置いてありました。そんなことを覚えてます。例会が終わると、会長さんが手招きして、…私が新しい顔ですから気にかけてくださったんでしょう。「M市に住んでいるのなら、M断酒会のH会長のところに行くといい」と教えてくれました。その日も飲みませんでした。これで断酒3日目です。

翌日、月曜日から3か月半ぐらい、デイケアに通いました。私は、デイケア、楽しかったですね。何しろ、みんなアル中っていうのが。私は自分の周りに、私ほどひどい酒飲みっていうのは、見たことがなかったんですね。酒飲みの女の周りに、周りには、やっぱり、同じような酒飲みの男っていうのが、まあ、結構寄ってくるわけなんですけれども…。なにしろ、私ほどヒドイ酒の飲み方をする人間っていうのは見たことがなかったんですが、デイケアの仲間たち、同じ病気の人たちと話をしていると、自分と同じような人がいっぱいいて、共感するところが大きかったんだと思います。とても癒されるって言うんでしょうかね、力をもらうことができました。

AAもメッセージに来てくれましたし、断酒会からも会員さんがきて体験談をしてくれました。プログラムの中でそうした機会が設けられているからです。そんな中で、自分がこれから先もできれば、…もう、どうなるかわからないけれども、自分はやっぱりこのまま、酒を飲まずに生きていきたいと、とにかくそれだけを考えて生きればいいというふうに割り切ったというか、そういう腹が決まってきたんですね。他のことは、とりあえずどうでもいいから、酒をやめるためだけに生きていこうというふうに、 まずはそれ、というふうにと思いました。

デイケアが非常にありがたかったのは、毎日通うことで生活のリズムを整えられたことです。朝起きて、1日そこで過ごして、夜はほぼ毎日スポーツジムに通って体調を整えました。そうした日々を送る中で、アルコール依存症から回復するにはどうしたらいいかっていうところについては、「もう、自助グループにずっと通う以外に手はないんだ」ということが、分かりました。デイケアも楽しかったですが、3か月半ぐらい経つと、やはり飽きてくるんですよね、さすがに。

そこで、短期のアルバイトに応募し、松坂屋上野店で採用されました。私は初めて、仕事で制服を着るという経験をしたんですけれども、さすが老舗のデパートで、ブラウスといい、ベストといい、スカートといい、本当に仕立てがいいんですよね。そんなことを覚えています。よい思い出になりました。おかげさまで、飲まずに、休まずに、契約期間を全うできました。そしてまた、次の仕事を探しながら、デイケアに通っていましたが、そのうち、デイケアは自然に卒業した形になりました。

そこからは、いろいろとありましたけれども、飲まない生活は続けて、社会復帰ですかね、それを果たしていきました。それと同時に、自助グループの活動というのは熱心に やるようになりました。断酒会とAAと両方に通っていまして、毎日どちらかに参加してっていうことでやっておりました。

…というようなことで、私が初めて酒を飲み、じきにアルコール依存症を発症して、とりあえず酒が止まるまでの話をさせていただきました。

時間にして53分ぐらい喋りましたけれども、これ本当、全く、ごくごく、ざっとしか話してはいないんですけれども、15年飲んで、 どういう感じで飲んでいて、酒が止まった時どうであったのかっていうことですよね。そこのところをとりあえず今回ここまでお話させてもらったので、今回の話はここまでにさせていただきます。まだまだ話すことはいっぱいありますので、ゆっくりやっていきたいと思っております。どうもありがとうございました。


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