私は、アルコール中毒者。病院のカルテには「アルコール依存症」と書かれていますが、知ったことではありません。アルコール中毒者、アル中です。 人間をやめる寸前に、酒をやめ、今日にいたっています。
表題は「アル中本」を読もう! です。「アル中、本を読もう!」ではありません。でも、書いてみるとどちらでもよい気もします。
夜、眠れますか? アルコール中毒者に睡眠障害はつきものです。飲んでいようが、やめていようが。
飲んでいる場合。酒が切れると目が覚めて、その苦しさで、眠れたものではありません。もう一杯、二杯、三杯(以下略)・・・意識がなくなるまで飲みます。深夜、明け方は問いません。そんなことにはかまっていられないのです。
酒を飲まなくなったアルコール中毒者。こちらも大変です。布団も枕もあるのに酒がないのです。やっていられません。途方にくれます。しばらくは眠剤(睡眠導入剤)のお世話になるのが一般的です。しかしながら、これにも問題があります。
酒と違って「キックが弱い」ことです。私も最初は怒りました。
「効かねーよ」
そうかといって「キックが強い」眠剤をぐっといくのも考えものです。やめるのが大変そうで、びびり、手が出せませんでした。
「本でも読もうか」
本がおもしろければ、酒のない夜もいつしか更けていく・・・
ところで、本は、つまらないほうが眠くなるのではないか。この試みは失敗しました。つまらない本は読めないのです。つまらなくて眠くなるまで読めません。そこは気の短いアル中のこと。無理に読むと、怒りの毒が心身をかけめぐります。危険です。 こうして、私は、酒の代わりに活字を浴びるようになりました。
さて、あまたの本たちと出会う中、あることに気づきました。どうしても見逃せません。アル中たち、です。主役をはるアル中もいれば、渋い脇役のアル中もいます。アル中がどのように書かれているか。そうだっ、そのとおりっ、というのもあり、いや、アル中はそんなんじゃない、というのもあり。それどころか、書いた作家本人がアル中、という本も多いのです。「アル中本」、それはアル中が描かれた作品、またはアル中が書いた作品。他人事でないだけに、読み手としての気合が違ってきます。思いのほか、奥深い世界です。 さあ、眠剤がわりに「アル中本」を読んでみませんか?