
回復の日常シリーズ#2
AAメンバーとして日々の生活の中で感じていることを書いていくシリーズです。
AAは宗教ではない
「AAって宗教なんですか?」
ミーティングに行こうとすると、多くの人がまずここを心配します。
私自身も、初めてAAのミーティングに行く前は「宗教だったらどうしよう」というよりも、「誰かに何かを強要されたり、支配されたりするような場所だったら嫌だな」と思っていました。でも実際に行ってみると、そういう雰囲気はまったくありませんでした。
先に結論から言います。
AAは宗教ではありません。
AAが宗教っぽく見える理由
教会でのミーティングが多い
AAが宗教っぽく見える理由のひとつはキリスト教の教会でミーティングが開かれているからではないでしょうか。公民館のようなところで開かれているミーティングも数多くありますが、やはり教会が会場になっているところも多いです。
なぜ教会が多いかといえば、ひとつには歴史的な背景があります。日本でAAが広がるきっかけのひとつとなったのが、ミニー神父という方でした。ミニー神父は、日本に赴任してきましたがアル中になって本国アメリカへ帰国せざるを得なくなりました。アメリカのAAで回復すると「日本でもっとも悲惨な境遇にいるアル中を助けよう」という使命感から日本に戻って東京のドヤ街、山谷(さんや)で最初のミーティング会場を開けたと言われています。日本人にAAのプログラムを伝えた最初のメンバーが神父だった関係で、教会との縁が深くなったことは間違いないと思われます。
また、実際の運営上の理由もあります。神父、牧師のみなさまはAAの活動について共感、理解してくださる方が圧倒的に多いため「会場として使わせてください」と、お願いしやすいのです。それに、AAのミーティング会場に必要なものはドアが閉まる部屋と椅子とテーブル(テーブルはなくてもいい)、コーヒーが作れる設備ですが、教会ならそうした設備もあります。公民館のような場所を借りるには予約が必要だし、コーヒーや書籍、献金箱のような備品は都度、メンバーが持っていかなくてはなりません。教会なら会場内の一角に置かせてもらえることも多いです。
…というようなことで、教会はAAのミーティング会場と親和性が高いと言えます。それに、なんといっても教会はムードがよいですよね。
祈りと黙想がある
AAでは、黙想と祈りがあることも「怪しい。やっぱり宗教ではないか。洗脳されるのではないか」と思われる理由のひとつではないでしょうか。
これは、AAの成り立ちに関わっています。
AAの12のステップは、1930年代のアメリカで活動していたキリスト教系の信仰運動「オックスフォード・グループ」の影響を強く受けています。
オックスフォード・グループは、信仰を通して自分の行動や生き方を変えていこうという運動で、「自己を正直に見つめること」「過ちを認めること」「償いをすること」などの実践を重視していました。AAの創始者ビル・W.やドクター・ボブも、この運動の影響を受けていて、その考え方をアルコール依存症の回復プログラムとして整理したものが「12のステップ」です。
「AAはキリスト教臭い」とよく言われます(笑)が、それもそのはず。AAの成り立ちがキリスト教文化圏にあるからです。
「祈り」については、日本のAAでもっともよく使われるのがこのお祈り。
神様、私にお与えください
自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを
自分に変えられるものは変えていく勇気を
そして、ふたつのものを見分ける賢さを
これは「小さなお祈り」または「平安の祈り」と呼ばれています。
一般的には、アメリカの神学者ラインホルド・ニーバーが1930年代に書いた祈りとされていて「ニーバーの祈り」とも言われます。
ただ、その内容は古代ギリシャのストア哲学にも通じると言われるほど普遍的なもので、宗教を超えて広く受け入れられています。
黙想や祈りはキリスト教の文化の中でよく見られる行為なので、宗教っぽく感じる人もいるかもしれませんね。
「神」という言葉が出てくる
AAの資料として広く知られている「ミーティングハンドブック」に「神」という言葉が出てくることが、「やはり宗教ではないか。洗脳されるのではないか」という疑いをもたれる契機になっているかもしれません。
ちなみに、ミーティングハンドブックは日本のAA特有のものです。AAの基本テキストである「Alcoholics Anonymous」(ビッグブック)からの抜粋と、先の「小さなお祈り」が掲載された小冊子で、便利ではありますが、これがあることで、メンバーがビッグブックを持ち歩かない、読まないという問題もあるような気がします(笑)。
さて、AAで言われる「神」は「自分なりに理解した神」で、特定の神のことではありません。ハイヤーパワー(自分を超えた偉大な力)とほぼ同義ととられてよいのではないかと思います。12ステップのステップ3に「自分なりに理解した神」という言葉がでてきますが、この部分は必ず太字になっています。とても大切なところだからです。この一言によってAAのプログラムは宗教の壁をやすやすと超えた、と私は思っています。大変な発明だと。「自分なりに理解した神」ということなので、クリスチャンであればキリスト教の神ですし、仏教徒ならダンマかもしれません。私はAAにつながった当初は「森羅万象」を自分なりに理解した神としてとらえました。私はAAメンバーになって20年近く経ったころ、テーラワーダ仏教徒になったのですが「いいじゃん、神で」ということで、相変わらず呼び方としては「神」、イメージとしては「森羅万象」としています。
なぜAAが宗教でないとはっきり言えるのか
真剣に説明しようとすれば「そもそも宗教とはなにか?」から説明しなければならなくなってしまいますが(笑)、簡単にいえば「特定の教義(教え)がない」から、というのがその理由です。AAのプログラムはすべて「提案」であって、どこからも誰からもあらゆることが強制されません。
実際にプログラムをやらないメンバーはいくらでもいます。AAのプログラムは「やると回復しますよ~。やりましょうよ~」という提案があるだけで、やらない人を排除することは誰にもできません。
AAメンバーになるための条件
AAメンバーになるための条件は、AAの共同体の原理を掲げた「AAの12の伝統」の3番に明確に記されています。
「伝統3 AAのメンバーになるために必要なことはただ一つ、飲酒をやめたいという願いだけである」
…そういうわけでAAは宗教ではありません。回復するためのメソッドを無償で受け取ることができますが、受け取らないのもまったくもってして、あなたの自由です。AAのミーティング会場にいるメンバーは、あなたと同じ経験をした人」たちです。何も強要しません。しても無駄だということを誰よりも知っているからです。連絡先も聞かれません。「行ってみようかな」と少しでも思うところがある方は、ぜひ、ミーティング会場に来てください。
(記:2026年3月14日)



