体験談

ニューヨーク AA武者修業たらたら編(4)

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ビックミーティング3回め オールドタイマーのスピーカーに沸く

カウントアップのあとはオールドタイマーのスピーチ。
オールドタイマーというのは、40年以上のソーバー(飲まない期間)のメンバーのことを言います。若いメンバーが自分は”I am ●●. I’m an alcoholic.”と自己紹介をして、その子が「何々さん話してください」と呼ぶと、オールドタイマーの仲間が出てきてスピーチをする、という粋な趣向でした。

でも、驚いたのが、ステージに上がった若いメンバーっていうのが、本当に若いんですよ。中学生とか高校生ぐらいの子。ソーバーは2か月という子もいたし、4年とか5年という子もいました。

その時、思いました。私がソーバー40年になるのはいつなのか。74歳まで飲まないでいると、ソーバー40年を迎えられます。その暁には、ぜひ、この、国際コンベンションでスピーチさせてほしいと思いました。こういう大舞台で話すスピーカーがどのように決められるのか分からないんですけれども、まず、私にチャンスは回ってこないでしょう。

ただ、唯一、オールドタイマーになれば、ワンチャンあるのではないかと(笑)。ソーバー40年超のアジアの女性のメンバーっていうことになると、結構限られてくるでしょうからね…密かに狙うことにします。前日のビックミーティングでお話された3人のスピーカーの方はそれなりに持ち時間が長かったのですが、この日のオールドタイマーのスピーチというのは、1人5分くらいで、その代わり、人数が多くて12、3人お話されました。

みんな高齢で、しかもスタジアムに集まった4万人近い人の前で話さなきゃいけないものですから、上手にまとめる方はいません。ほとんど喋れなくて、一言「来年また呼んでくれ」とだけ言って、仲間の温かい拍手を浴びる仲間もいれば、歌を歌いだす仲間もいました。最後のスピーカーもほとんど話せず「オレは困っている。君たちも苦しんでいるからここにいるんだろう?」なんて言って笑わせてくれました。最後にうまいスピーカーの方が締めるのも素晴らしいですけど、とぼけた味わいのあるスピーカーの方に、締めてもらえて、すごくよかったです!

あっという間にクロージング

翌日、7月3日の日曜日。もう、クロージングです。
午前中にまたスタジアムでビッグミーティングがあり、スピーカーが3人出ました。この時は、私も、同時通訳機を借りられたので内容を理解することができました。ちなみにその国から100名以上の参加者がいると、コンベンションの実行委員会のほうから、その国の言葉の同時通訳者を手配してもらえます。ボランティアの方がブースに入って同時通訳をしてくださって、それをイヤフォンで聞けるんですね。同時通訳をしていただけるのは、ビックミーティングだけです。なぜか初日、2日は同時通訳機が渡されなかったのですが、なぜかは分かりません。あればよかったのにとも思いましたが「ま、いっか」てなもんです。

ちょっと内容をご紹介しましょう。
1人目は、ネイティブアメリカンの居住地で生まれ育った仲間。
…彼のお母さんが、重度のアル中で、多分、アルコール依存症の人が入る施設で自分を産んだと思うのだが詳しいことは分からない。
…産まれてまもなくお母さんとは離れ離れになってしまい、それっきり会っていない。
…祖母に育てられ、ネイティブアメリカンの子が行く幼児教育機関を経て、公立学校に進んだものの、9歳ぐらいからシンナーをはじめとするドラッグをやるようになった。
…カレッジを卒業できて体育の教師になったが、アルコールで問題を起こし、刑務所(jail:日本でいう留置場、拘置所に近いと思われる)に入れられた。そのとき入れられた部屋に、紙があったので、「なぜ自分がこうなったのか」ということを書いてみた。なぜかわからないけれども、急にそうしたくなった。翌朝、目が覚めて、書いたものを読んでみると、不意に自分の本当の姿が見えた。「自分はこうである」と、自分が思い描いてる自分の姿と実際の自分が、あまりにかけ離れてしまっていることに気づいて泣いた。
――という、印象的なお話でした。ごく浅い知識として、ネイティブ・アメリカンの方々の間にアルコール依存症が蔓延した、ということは知っていましたが、アルコール依存症のお母さんから産まれ、9歳という早い時期からドラッグを始めた方がAAのプログラムによって回復した、という話が印象的でした。

2人目のスピーカーのお話についてはメモが残っていません。

3人目のスピーカーは、なにかすごいオーラが出ていました。
…アル中が行く施設に関しては、行くところはもう全て行き尽くした。
…飲酒運転で人を2人、死なせてしまった。その件で刑務所に入ってAAに参加した。言い渡されて刑期は15年だったけれども、3年半に縮まった。

15年の刑期が3年半にまで縮まったのは、やはりAAのプログラムが大いに関係したと思われます。出所後は社会復帰に励んで、矯正施設(更生施設だったかもしれません)のスタッフになり、今は所長として仕事をしているということでした。彼はアメリカ在住で、カナダは出禁になっているそうですが…もちろんかつて飲酒していた時代にいろいろあったからでしょう…今回、トロントにくるにあたってビックミーティングでスピーカーをする、という事情を伝えて、特別に許可してもらってカナダの国境を越えることができたっていうふうに言ってました。彼の話では刑務所内だけで7万人のAAメンバーがいるとのこと! 刑務所内だけで7万人メンバーがいるっていうことで、やはりその規模感に感動しました。ところが現在確認してみますと矯正施設内のAAメンバーはおよそ3万人であるということです。私の聞き間違えか、なにかしらカウントの仕方が違っていたのかもしれません。はっきりしなくて申し訳ないのですが、3万人であってもやはり感動するメンバー数には違いありません。

…そういうことで、ビックミーティングブックでスピーチするようなメンバーは本当にすごいですよね。最後にスピーチした仲間と、みんな一緒に写真撮影したり、握手したり、ハグしたりしたがって、列が出来ていました(笑)。私も彼を囲んで、日本の仲間と一緒に写真を撮ってもらいましたが、写真を保存しておいたパソコンが壊れたので、残っていません。ホント、残念です。

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