体験談

アル中 集中内観に行ってみた(3)

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「嘘と盗み」のテーマで逃げ出しかける

続く内観のテーマの中は「嘘と盗み」。このテーマで自分を振り返ります。嘘と盗みについて細かく分けた24項目の一覧表があります。例えば虚言…嘘をついたこと。盗みで言うと、例えば遅刻。これは「他人の時間を盗んだ」という意味ですね。同じ盗みで「場の雰囲気を壊す」というのもありました。私は、これがすごく多かったですね。場の雰囲気を壊す。要するに、腹を立てて誰かにひどい言葉を言ってしまったとか。私の場合はもちろんアルコールの問題で酒の席をぶち壊した…などというのがたくさん出てきます。「隠し事」という項目もあって、これは「嘘」グループに入っています。

こちらも、3~5年で区切りながら、自分の「嘘と盗み」について調べていきます。最初の内観と異なるのは思い出したら「書く」ということです。一覧表を見ながら、例えば0歳から例えば幼稚園卒園までの自分に、24項目のいずれかに当てはまることがないかを調べていきます。

例えば、お母さんのお財布からお金を抜きました、とか、◯◯ちゃんの頭をぽかぽか叩きました、とか。私はアル中ですからね、酒で酔いつぶれて、担いで帰ってきてもらいました、とか。これなんかは、「他人の時間を盗んだ」「場を壊した」というのにもろに当てはまります。

24項目には番号が振ってあります。自分を調べて書いた出来事に該当する番号を書いていきます。複数あてはまる場合はすべての番号を書きます。

さて、当年57歳の私。57年生きていれば「嘘と盗み」は本当にたくさんしでかしているわけです。最初にやった縁の深い人たちとの関係を振り返る内観では「していただいたこと、して返したこと、迷惑をかけたこと」の3つを調べましたが、今回のテーマでは、「していただいたこと、して返したこと」の2つがない(笑)。いいところがちっともなくて、ひたすら自分がやってきた悪いことについて調べて書いていきます。ちょうど丸1日やったあたり、年齢の区切りで言うと30代の後半から40代ぐらいまでやったところで、すっかり嫌になってしまいました。時期的にも少々疲れて、気が緩んだっていうところもあったのかもしれません。

もちろん内観ですから、反省文を書くのではなく事実を見ていきます。これがやはり厳しいんですね。40代前半ぐらいのあたりで、あまり書けなくなってしまいました。

まず、集中力が削がれました。1時間ごとに面接者の方がいらっしゃいますが、その間、6つしか書けませんでした。しかも、面接者に、端的に事実を報告できなくなってしまいました。「こういうことをしました。こういうことがありました」と報告するところを、「カクカクシカジカ、こうだったから、私はこうして~」という感じ。だから、事実ではなくて出来事を述べるような感じになりました。自分でも「あれ?」と思ったんですけれども、面接者も、「もっと端的に事実をおっしゃってください。数も少ないようなので、もっとしっかり思い出してください」と注意してくださいました。

私も結構疲れて嫌になっておりまして、内心「屏風を蹴倒して帰ろうかな」とか思っていましたものですから(笑)、面接者に「すみません。自分がしてきた悪いことばかり思い出してるうちに、嫌になってしまいまして…」と、思わずぼやきました。そうしましたら面接者の先生は「せっかくここまでいらっしゃったんですから、しっかり書いてください。しっかり思い出さないと、またやりますから」とお答えくださいました。その面接者の先生は大学の先生(いまはリタイア)ということもあり、とても品のいい方で、もの静かなおっしゃりようでそのように言われますと、ある種の迫力が…!

そのとき、私の心の底から「ですよね~」という声が聞こえました。

「その通り!」

なんで、少ししか書いていないとお分かりになったのだろう? と思いましたが、ノートを見れば一目瞭然なんですね。ちなみに集中内観は「メモ禁止だよ」と聞いていたので、書くことを想定していませんでした。老眼鏡も持たず、筆記用具もボールペンを2本だけ。この後も、ずっと書き続けまして、入れ替えたばかりのお気に入りのボールペンの芯を使い切るくらい書くことになりました。

無言の気遣いに励まされて、内観に復帰

面接者の先生は、3人いらっしゃって、およそ1時間ごとにその中のどなたかがお見えになります。先生方も、内観に取り組んでいる人の様子を、よくご覧になっているのだと思います。「集中力なくなってきたな」とか「そろそろ音を上げるかな」というところは、すぐに見抜くのでしょう。その後、別の面接者の方がお菓子持ってきてくださったり、「先にお風呂に入ってください」と声をかけてくださったり。おそらく気を使っていただいたのだろうと思います。気を取り直して頑張れるようにご配慮をいただいたんだろうとありがたく感じました。

気合いが入りまして「さあ、頑張ろう」という気になりました。お風呂に入った後、髪を乾かすのも忘れてガーゼの手ぬぐいを頭に巻いたまま、内観を続け、そのまま面接しました(笑)。

そこから先は、最後までそれなりの集中力で続けることができたかなと思います。

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続くテーマに取りかかります。
そのお話は、また次回に──。

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