酔いざめ川柳 2021年

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初詣 COVID-19 に こうべ垂れ

伊達巻の 甘さ うれしや シラフの正月

(新年のごあいさつ)

昨年は保護猫三十数匹の里親探しに協力することができた。多くの猫をみていると運命というものを強く感じる。運の良い子に共通するのは、順応性が高いこと、なんとなく明るさを感じさせること、人や他の猫とほどほどに協調できること、などである。おそらくアル中の断酒も同じで、気を楽にもち、断酒に導いてくれる仲間となじめばかなりの確率でうまくいく。今年も仲間とともに一日断酒を続けて幸運をひきよせたい。

(二〇二十年十二月某日 なによりも 仲間の存在 かみほとけ)

 

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ウィルス(COVID-19)の おかげで コート買わずに 春を待つ

おかげさま びっくりするほど おかげさま

(如月のごあいさつ)

六月は自分がこの世に生まれた誕生日、十月は断酒会につながった誕生月、そして二月は「酔いざめ川柳」の誕生月だ。十九年間で、休載は二回。休載の理由は、一回目は不明、二回目は北米大陸をうろうろしていて書きそびれた。 なにがともあれ毎月、この原稿を提出することが私にとってかなりの重要事であることに気づいて驚く。今度はインド・スリランカあたりをうろうろして書きそびれたい。

(二〇二一年一月某日 祝! 酔いざめ川柳十九周年)

 

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凛として 梅の香 ウィルス(COVID-19) 通り抜け

結局は 特技も 趣味も 体験談

(弥生のごあいさつ)

とあるセミナーで講師を担当した。人前で話すのが好きなので、思い切り楽しんだ。例会では「自分の話をする」より「人の話を聞く」時間が圧倒的に長い。我ながらよく聞いていられると感心するが、聞いている間だけ自分の意見や感想、感情などを手放すことができる。命と自己と天秤にかけて、本能が命を選んでいるに違いない。だから誰の体験談も飽きることがない。

(二〇二一年二月某日 ウィルスで 動けないまま 右往左往)

 

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五十路(いそじ)過ぎ 旅の荷 小さくなりにけり

資源ごみ ついチェックする 酒の瓶

(卯月のごあいさつ)

恋猫や 何語るらん 春の宵

おしなべて 酒も寒さも 底 長し

(卯月のごあいさつ)

書類を書く機会があり、久しぶりに自分の年齢を思い出した。忘れていたとは図々しい。それはともかく、満五十二歳。かの有名な「アル中の平均寿命」(通説)に達した。飲み続けていたら逝っていただろうか。

断酒会につながって間もない頃、仲間と遊びに行ったり行事に参加したり、悩みを相談しあったりするたびに「これって、失った青春を取り戻してる?」と感じた。一日断酒の修行、未(いま)だに青春、未(いま)だに鼻たれ小僧だ。がんばれ、自分。

(二〇二一年三月某日 河津桜からソメイヨシノにバトンタッチ)

 

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アイスクリーム すくいやすくなり 春が行く

アル中の 診断 飲んでる 銘柄で

(皐月のごあいさつ)

新型コロナウィルスが世の中にもたらした諸々の変化の中に、オンライン会議の普及というものがある。パソコンやスマホで、ZoomやらSkype やらを使ってやる、例のアレだ。難点はオンライン会議だと、ちょっとした雑談がしにくいこと。初対面やそれに近い人と親しくなりにくいが、一声かければなんとかなる。考えてみれば私たちは一日断酒という、およそあり得ないと思われた事態に適応して楽しめるようになったのだ。変化には強くなったはず。残りのコロナ時代も楽しくすごしたい。

(二〇二一年四月某日 ウィルスも桜の花とともに舞う)

 

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衣替え 年々 楽に なりにけり

それっぽっちで 赤くなって と 優越感

(水無月のごあいさつ)

我が家の近くで開かれた「未開の山でリトリート」というイベントに参加した。参加者の平均年齢は四十代後半くらい。焚(た)き火でお湯を沸かしてコーヒーを入れたり(難しかった!)、瞑想したり、ギターの弾き語りを楽しんだり、大人の遠足という趣(おもむき)。山頂での献杯からはじまった酒が捗(はかど)って、夕方までに一升瓶が空いた。家が近いので空き瓶は私が持ち帰ることに。長年の罪滅ぼしの一環として善行為のつもりだったけれども、家のゴミ箱に捨てるときに少しどきどきした。

(二〇二一年五月某日 馬橋小学校の春の遠足は「江戸川土手」が習わし)

 

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プロフィール 三年前の 写真 出し

酒のない 怖さ 天変地異を 超え

(葉月のごあいさつ)

最近の風物「路上飲み」。南房総では見かけないので松戸在住の方に本当に流行っているのか聞いてみたところ「確かに見かける」とのこと。(一)安酒である、(二)習慣になっている酒(「ハレとケ」でケの酒)である、この二点に加え(三)安全な場所とはいえないところで飲む、となると、かなり逸脱感がある。黄色信号点滅だ。飲むならいろいろな意味で良い酒を飲んでいただきたいが、まあ…言いにくい。

(二〇二一年六月某日 酒は新型コロナウィルスよりも…)

 

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カレンダー もう半分と ちょい慌(あわ)て

ストローで 酒 飲んだ日を 思い出し

(葉月のごあいさつ)

 これを書いている今日がちょうど、私の五十三回目の誕生日だ。近頃は毎日死ぬことばかり考えていて、これがなかなか乙(おつ)なものに感じる。死んだら「ああ、死んじゃったねえ、スノウチさん」で終わりか・・・と思うと、さっさと仕事にとりかかる気にもなるし、イライラそわそわカッカした気持ちは脇に置いておきたくなる。死ぬまでは、一日断酒で良く生きていきたい。まあまあでよいので。

(二〇二一年七月某日 メメント・モリというカッコ良い言葉も)

 

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山ほどの 氷砂糖で 梅仕事

今日もまた 転がり 転がり いきて いき

(長月のごあいさつ)

先月「ストローで 酒 飲んだ日を 思い出し」の句を作った。その後、インターネットで「ストローで酒を飲むと酔いやすい」という風説が結構広く流れていることを知り、驚いた。違う、違う。酔いを回そうとした訳ではない。連続飲酒で体を起こして飲むのがかったるくなってやむを得ずにストローで飲んだ、という絵図だ。しかし落ち着いて考えてみると、断酒会の諸兄諸姉には、説明せずともかなり正確に伝わっていたのではないか。心配は無用だったに違いない。

(二〇二一年八月某日 ストローで 飲んだくらいじゃ 回らない)

 

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なんでだか 従順になる 注射前

他人事(ひとごと)では あるが Zoom飲み会 どうなった?

(神無月のごあいさつ)

一回目のワクチン接種を受けた。集団接種会場で、ぞろぞろぞろぞろ大行列。指示に従って着々と事が進む。問題は山積しているが公衆衛生と医療の制度が整った国で生活していることがありがたい。飲んでいた頃は一度たりとも自分が暮らす社会に感謝しなかったことに思い至り反省。アルコール依存症にだって公的保険が効く。病院では治せない病ではあるけれども、断酒会にバトンタッチで回復できる。多くの仲間がチャンスを無駄にしないことを祈る。

(二〇二一年九月某日 打ち手が若い歯科医師でちょっとうれしかった)

 

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不意打ちで してやられそうになる 秋ビール

毎日が 落としどころで 二十年

(霜月のごあいさつ)

二〇〇一年九月六日に飲んだのが今のところ「最後の酒」となっている。あれから二十年。十五年間も狂ったように飲み、同世代の多くの方が仕事に家庭にと人生を築いていく中、取り残された。「私も早くからちゃんとしておけば」と思うこともあるが、一日断酒で生かしてもらったその後の二十年を振り返って今、感じるのは「これでいいのだ♪」(by天才バカボン)。周囲にかけた迷惑が大きいので、残りの人生で、なんとか貸し借りゼロまで近づくことを目指したい。

(二〇二一年十月某日 断酒道二十段。今日も一日断酒!)

 

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まだ 居たか 酒のおまけのコップたち

お肴(さかな)で ご飯 がつがつ食べて 冬晴れ

(師走のごあいさつ)

秋も果てる頃合い、ボージョレ・ヌーヴォーの噂がきこえる。かつてはいろいろな酒を飲んだが「おいしい」と味わったのは最初の一杯。その一杯だって、実は「次の一杯」のほうが大切だった。どの一杯もいつだって次の、そしてまた次の一杯を求めて飲んだ。酒に未練はないが、懐かしい思いはある。スブロッカなど、もう一度飲んでみたい。馬乳酒、アブサンあたりは未体験。飲み損ねたので諦めよう。

(二〇二一年十一月某日 秋の夜も 歯にしみとほさずに 飲み続け)

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