酔いざめ川柳 2020年

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カレンダーの厚み 楽しみ 晴れて初春

百八の 煩悩(ぼんのう) 鎮(しず)まる 例会場

(新年のごあいさつ)

昨年は「依存症」という言葉が流布した最初の年ではなかったか。依存症(またはその疑い)の著名人数人が注目されたからだ。しっかりした見解を世に示してくれた医師も現れた。今年はぜひ「依存症からの回復ブーム」がおきてほしい。断酒会も見学者や入会希望者が殺到して忙しくなりますように!

(二〇一九年十二月某日 素面の元旦 なによりめでたく)

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コーヒーの ドリップ 待てる ありがたさ

飲まないで 死んだと 代々 語り継げ

(如月のごあいさつ)

昨年のよしなしごと。一月、Webサイト「南房総的 起業人」取材でインタビュイー初体験。三月、取材のためミラーレス一眼レフカメラ購入。四月・五月、オンライン以外で初ディレクター。六月、仔猫二匹保護、里親さんへ譲渡。九月、二度の台風襲来。十月、日本テーラワーダ仏教協会入会。十一月、「南房総ex(エクス)-press(プレス)」共同代表就任。十二月、民生委員・児童委員の任期始まる。

「おもしろきこともなき世を面白く」by高杉晋作。今年も一日断酒で愉快に。

(二〇二十年一月某日 祝! 酔いざめ川柳十八周年)

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リダツ(離脱)より マシと インフルエンザで やせがまん

入れなけりゃ 出てはこないぜ 体験談

(弥生のごあいさつ)

不覚にもインフルエンザで数日寝込んだ。「これしきのこと、酒の離脱症状に比べればはるかにマシ。きっといつか死ぬときも離脱を超える苦しみにあうことはないだろう」・・・と、余裕のポーズ。そこへ、仕事仲間がオメデタでつわりが大変との一報が入った。洗面器を抱えて白目をむいている、吐いたはずみでぎっくり腰になった、と聞くにつれ「母は強し」とおののいた。所詮、苦労が足りない私なのであった。

(二〇二十年二月某日 インフルエンザが抜けて青空)

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五十路(いそじ)過ぎ 旅の荷 小さくなりにけり

資源ごみ ついチェックする 酒の瓶

(卯月のごあいさつ)

研修旅行に参加した。四泊五日で参加者の年代はさまざま。年代により、荷物の大きさがはっきり分かれているのが面白かった。私たちおばさん組は小ぶりの旅行バックひとつ。若い娘さんたちはトランクで大荷物。中には化粧道具やら着替えやら・・・いや、エネルギーや夢、期待や自意識が詰まっているに違いない。年をとると、その辺は溶けて消えて軽くなってくる。若いって大変だけど、目にまぶしく美しい。

(二〇二十年三月某日 年をとる分だけ、断酒会で昇段できます)

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高級な ギフト(贈り物) マスクの 詰め合わせ

味わわず 飲んだ酒へと ちょい合掌

(皐月のごあいさつ)

当初「新型コロナなんぞより酒のほうが怖いぞ!」と息巻いていたものの、やはり感染も怖い。世の中自粛ムードとはいえ、考えてみれば私たちは、宴会も盛り場も割と縁遠く、そのあたりは、へっちゃらである。それに新型コロナは今のところ特効薬がないのに対し、アルコール依存症には自助グループという特効薬がある。一日断酒の生活でウィルスとは距離をおき、楽しく過ごしたい。

(二〇二十年四月某日 桜を見損ねて 春爛漫)

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コロナ禍で 髪型 ロングが 流行(はや)りだし

アル中の 回復 三寒四温かな

(水無月のごあいさつ)

新型コロナウィルス襲来でテレワークの方が急増。朝酒、昼酒がやめられない方が多数現れ、ご自身でも困惑しているようだ。テレワーク昼酒組のみなさんは、もともとアルコール依存症で、それが表面化したにすぎない。平時、タイムカードの護符があったときには隠されていたものが、災禍によってあらわになった。ショックだろうが、このチャンスを活かしたらいい。

新型コロナ禍が「新生」する人も、数多くもたらしますように!

そして早く例会場を開けられる日が来ますように!

(二〇二十年五月某日 買っちゃった春服は来年に)

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やがて枯れる 花の 水 とりかえて 一日断酒

オンライン飲み会 見えないところで 酒を注(つ)ぎ

(葉月のごあいさつ)

新型コロナウィルスによる自粛期間が長引いている。とはいっても、私の場合、もともとインターネットが中心の仕事をしており、個人の用事も打ち合わせはオンライン。友人たちともSkypeやらZoomやらを使っておしゃべり。LINEもくる。外出しなくても朝から晩まで慌ただしい。しかし確実になにかが足りなくなってきている。生き生きとした感情が色褪せ、書いたりしゃべったりする意欲が薄れてきた。早く例会に復帰してチャージしたい。このままでは川柳も書けなくなりそう!

(二〇二十年六月某日 無くなって知る、ありがたみ!)

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雨傘か 日傘を さして 日々 過ごし

暑気払い マスクずらして ビール飲み

(葉月のごあいさつ)

民生委員の役割で、ひとり暮らしのお年寄りを訪問する機会が多い。みなさん元気で「私のほうが先に仕舞(しま)って(房州弁:死んで、の意)しまうのでは」と思ったりする。私の老後はどうするか。もちろん足腰立つうちは例会に出席する。歩けなくなったらオンライン、パソコンが使えなくなったら電話で「断酒相談室  美奈子ばあさんの家」を開設しよう。耳が遠くなったら体験談を書き残そう。長く続けられる役割があってありがたい。

(二〇二十年七月某日 晴雨兼用傘を買っちゃおうかしら!)

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花火ない 夏 蝉の声 天を打ち

ワンカップ 時代 恋しや ストロング

(長月のごあいさつ)

沖縄県のオリオンビール株式会社がストロング系チューハイ「WATTA STRONG」の生産を終了した。ストロング系チューハイは体と脳への健康被害が指摘されている。「県民の健康に貢献することが(会社の)使命なので」という理由で売れ筋商品の生産をやめたのだ。あっぱれ、英断である。思わずオリオンビールをケース買いしたくなった。が、そうもいかない。同社商品で唯一、口にできるものはオリオンレモンティー。見かけたら買ってごくごくと飲み、はるか遠くの美しい海を思おう。

(二〇二十年八月某日 石垣島旅行の思い出は泡盛だけ!)

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猫 上手く 家で 避暑地を 見つけ出し

六千四百九十日 一日断酒で 十九年

(神無月のごあいさつ)

今年も飲まずに誕生表彰の月を迎えられてありがたい。

十八歳から十五年間は酒を飲むことだけ、その後十年間は酒を飲まないことだけを考えて、とにかく生きた。続く九年間で「いかに生きるか」考えたような気がする。ここへきて思うのは、もはや「考えるのは無駄」ということ。一日一日、一時間一時間、一分一分、一瞬一瞬、しっかり生きていこう。

(二〇二十年九月某日 猫、冬は丸くなり、夏は伸びる)

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いて欲しい 春 秋 さっさと 去り給う

酒売り場 色 賑やかに 毒 隠し

(霜月のごあいさつ)

以前、この「房総」誌面で「アル中本を読もう!」というコラムを連載させてもらった。アル中が登場する本やアル中が書いた本を紹介する、というもの。今、仕事で南房総をテーマとするブログを執筆しており、「房総本を読もう!」というシリーズを書きはじめた。発想に進歩がない。それはいいとして、数本は書けそうだが続けるのは案外難しい。世に出回っている活字の中でいかにアル中が闊歩(かっぽ)しているか、そしていかに文筆業と酒との関係が深いか思い知らされる。

(二〇二十年十月某日 酒でよく 本 ふやかして 秋の夜)

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いつからか 日が暮れるように 年が暮れ

求めても 酒のもたらす暖は まぼろし

(師走のごあいさつ)

今年一年を振り返ってみたかったが、新型コロナウィルス流行のため諸行事のほとんどが中止になり、カッコよくまとまらない。けれども今年もまた、我らが誇らしい「一日断酒」が三百六十六日、積み重なった。アル中は変化に弱いと言われるが、自助グループにつながっている面々をみるかぎり、粛々と落ち着いて過ごしたように見える。そう、私たちは死を急速に近づける何者かと真剣に向き合わざるを得なかった経験を持つ。これからもこの経験を頼りに生きていきたい。

(二〇二十年十一月某日 一日どころか一年なんとか過ごせて奇跡!)

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