酔いざめ川柳 2019年

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気がかりを 日々片付けて 年の暮れ

平成の終わり しらふで 越して 初春

(新年のごあいさつ)

 元号があらたまる。かつて「平成生まれのアイドル」という表現があった。その平成元年生まれも早や二十九歳。私はミッド昭和生まれの女だが、酒につかまったのは平成に入って早々。平成前半をひたすら酒を飲んで過ごし、平成後期をひたすら一日断酒で過ごした。そう、私はまさに「平成のアル中」なのである。・・・ちっとも威張れない。新しい元号の下、また日々飲まずに生き続けたい。

(二〇一八年十二月某日 猫のためにクリスマスブーツ!

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アル中や 目標 目的 抱負 何も変わらず 雑煮 食い

今ならば よく理解できる シメの麺

(如月のごあいさつ)

 いつも酔いざめ川柳をお読みいただきありがとうございます。誕生表彰の賞状の文言を借りれば、「これ全く『私』の確固たる信念と努力精進の賜物『ではなく』」お読みいただく方の御心により、十七年続きました。これからもよろず皆様まかせでございます。

 ・・・今年は、できれば酔いざめ川柳をまとめて電子出版したいと思っている。 ベストセラーになったら印税は断酒会に寄付する。多分。

(二〇一八年一月某日 祝! 酔いざめ川柳十七周年)

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弔いの 帰途 何もかも 美しく

新年会 そっぽむきつつ 燗(かん)の番

(弥生のごあいさつ)

 仕事仲間の若い人が結婚し、お披露目パーティーに呼ばれた。全参加者、片手にスマホ。プロジェクタには、二人の思い出や結婚式の様子が絶えず動画で流される。今風だ。やっと隅っこのほうで見つけたソファに陣取ったが「壁の花」という言葉がもはや若者に通じないのみならず、花どころか「壁の婆」で残念だ。

それにしても、私にも本気で人を祝える日が来たとは! 友の結婚もめでたいが、私自身も、とてもめでたい。

(二〇一九年二月某日 アル中よ 酒手放して 幸せになれ!)

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「棒に振る」 ってほどの 人生とは 言えず

美酒よりも 雑に 飲む酒 なつかしく

(卯月のごあいさつ)

テレビドラマ「レディ・ジョーカー」を観た。ビール会社が舞台で、ビールやその他の酒の映像がたびたび登場する。琥珀色のビールが、磨かれたグラスに注がれるのもうっとりするが、それだけ。ちゃぶ台に置かれた湯呑に焼酎をついで、ぐっと飲み干すシーン、散らかった部屋にうずくまって安そうなコップにウィスキーを注いで一息に空けるシーン。ぐっときたのはそんなシーンだ。自分がどんな酒飲みだったかよく分かる。こうしたテレビドラマが面白く観られるようになってとてもうれしい。

(二〇一九年三月某日 酒は「昔の男」かな?)

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陽だまりの 猫には 春が よく似合い

アル中の ほうが 悪い気もする 歌手逮捕

(皐月のごあいさつ)

ホーホケキョッキョッーという下手くそなウグイスの鳴き声。いよいよ春、到来だ。お花見や、新しい春のコートを着る楽しみは二の次。早く日が昇るのと寒さが緩んだのが何よりありがたい。日のあるうちに、例会に向かえるのも助かる。何につけても、若いころのウキウキ感は極度に減ったが「しみじみとありがたい」という思いは強くなった。プラスマイナスゼロである。うまくできている。

(二〇一九年四月某日 鶯(うぐいす)の 歌 日々 うまくなり 春爛漫)

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遊ぶより 片付けやりたし 五十路(いそじ)の休暇

アルバムの 整理で 「新生」の 意味を知り

(水無月のごあいさつ)

確定申告が終わった! ついでに家計も見直してみた。田舎暮らしで生じる費用で大きいのは車両費。車は一人一台必要なので、二台分の任意保険、ガソリン、タイヤ交換、オイル交換などなど。年間費用は一年分の家賃と並ぶ勢いだ。一方、田舎暮らしで減ったのは健康にかける費用。都会での生活で必要だった鍼(はり)治療やら健康食品やらは、あっさり不要に。意外な敵は「運動不足」。歩け、歩け!

(二〇一九年五月某日 歩こう! 例会へ、山へ、海へ)

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梅もいで またひとつ 年 とりにけり

生き生きて 麦酒(ビール) ない 夏 また巡(めぐ)り

(文月のごあいさつ)

毎年七月になると思い出すことがある。「一九九九年七の月 空から恐怖の大王が降ってくる」という、ノストラダムスの大予言。一九九九年、私の酒は末期状態になっており「地球でも人類でも滅びるなら滅びやがれ」と思っていた。二〇〇一年から飲まない生活がはじまって巡ってきた最初の七月。ふと「明日、世界が滅亡するとして、私は酒を飲むだろうか?」と自問し「いや、飲まない」と自答。一日断酒が続いた数か月で、世界観が変わったのだ。

(二〇一九年六月某日 梅干し・梅ジャム・梅シロップ!)

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膝たたき 頭たたいて 思いだし

断酒(かい)会員(いん)が うっすら家族で 命 延び

(葉月のごあいさつ)

首痛・腰痛・膝痛、と思いがけず体にガタがきた。痛いというのは大変なもので、生活に障り、結構、参る。いろいろ対策した結果、地元の接骨院で治療とトレーニングを受けることにした。楽ではないものの、体の痛みは分かりやすいからよい。アルコール依存症は自分ばかりか周囲をさんざん痛くして、しかも分かりにくいのが大変なところ。例会という確実な「治療&トレーニング」につながる人が少しでも増えますように!

(二〇一九年七月某日 夏が来てもビールは来ない!))

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高級な 菓子は テレビを 見ずに 食い

「家飲み」とは 言えず 部屋酒 布団酒

(長月のごあいさつ)

 昨年、東京外環道・松戸ⅠCが開通した。これで館山道・富浦ⅠCから松戸市内まで高速道路に乗って来られるようになったのでトライした。ジャンクションを通るたびに道を間違えそうになり、合流では心臓がばくばくしたが、無事に往来した。我ながら快挙である。それにしても高速道路の標識は難解だ。(と思うのは私だけか?)。感想。高速道路の走行は、アル中の一日断酒と同じ。逆走さえしなければ、なんとかなる。もっとも一日断酒は逆走(飲酒)したら翌日やり直せばよいだけだが。

(二〇一九年八月某日 車も断酒も安全運転で!)

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カタログを 片付け終えたら 次 届き

中元の ビールもらって 大慌て

(神無月のごあいさつ)

 あまりの暑さにネタも出ず、あやうくこのコーナーを休載にしてしまうところだった。川柳が作れなくてうなることは時々あれど、どういうわけだか最後はなにか出てくる。とはいえ、近頃では面白さで竹下さんの俳句に負けていることしばしば。川柳が面白さで俳句に負けてどうする。麦茶で英気を養って諧謔(かいぎゃく)精神を肥やし、芸術の秋に備えたい。

(二〇一九年九月某日 書かせてくださるのは読者のみなさま)

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台風(あらし)去り 竹 少しずつ 起きあがり

飲む夢も 一杯だけなら お断り

(霜月のごあいさつ)

 病院で体験談をする機会をいただいた。おかげですっかり充電させてもらい、台風十五号により停電、通信不通、断水していた四日間も落ち着いて過ごすことができた。げに、体験談は命の保障で、聞き手は命綱。

 聞いてくださったみなさま、ぜひ例会場でお会いし、熱い体験談を交わしましょう。体験談は年齢・性別・学歴・容姿不問、値打ちは「正直さ」。例会場は「ひどい体験ほど他の人の役に立つ」という世にも珍しい場所なんですよ!

(二〇一九年十月某日 飲んでいるアル中って台風みたい・・・)

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停電の 夜の静寂(しじま)を 味わえり

あと何枚 いただけるかと 表彰状

(師走のごあいさつ)

 台風十九号のため、楽しみにしていた十八段の誕生表彰に出席できなかった。かつて表彰には意味がないと思い、出席しなかった時期があるが、ふと気づいた。「前年と同じメンバーと一緒に表彰される」ということはとてもありがたいことなのだ、と。以来必ず出席するようにしている。同じ表彰月の会員さんが連なり、体験談の番が回ってこないくらいになってほしい、ぜひ。

(二〇一九年十一月某日 これからは毎年ドレスアップで?)

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