お酒を飲まずに生きるには

酔いざめ川柳 2009年

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機嫌よく ならない酒を ン十年

毎日を 惑い 惑って 不惑の初春

(正月のごあいさつ)
正月くらいは、着物姿になりたい。泥大島をしっとり着こなす人妻、という役どころが希望だ。が、ユニクロの部屋着でゴロ寝する四十路(よそじ)の独身女、というのが実際のところ。  今年の抱負。――美しいヒトになりたい。 まずは一日断酒が第一歩か。めざせ、断酒美人!(すごい。新造語かも)
(二〇〇九年十二月某日 なによりも 飲まないことこそ めでたけれ)

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ウーロン茶 いくら飲んでも 味 利(き)かず

簡単に へこたれ 負けるの 得手(えて)になり

(如月のごあいさつ)
断酒会に入会し、初参加の「酒なし新年会」で小噺を披露させていただいた。実は私、学生時代は「落語研究会」におり、酒を飲む合間にせっせと寄席に通った。男性であれば落語家に入門し、芸の道を志していたかも。  人前で歌いたい、踊りたい、というのは健全な自己顕示欲だと思う。でも「人を笑わせたい」という欲求には何か一癖あるような気がする。とくに女性だと。
(二〇〇九年 元旦 祝・酔いざめ川柳七周年!)

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当てにせず 当てにもされず 今日も生き

他所 (よそ) ン 家 ち の 親心はよく  忖度(そんたく) し

(弥生のごあいさつ)
七年前、酒が止まって最初に入った職場は女性ばかりだった。そこで感じたのは「世の女性たちは偉い」ということだった。まったく驚いた。働き、家事をし、夫や子どもと関わり、その隙間をぬって美容法を試したりマニキュアを塗ったり、ときには飲みにいったりもする。当時は、なんとなく肩身が狭い思いがしたが、今は職場の女性たちとも臆せずおしゃべりが楽しめる。もし来世というものがあるとしたら、また女性に生まれてきたい。
(二〇〇九年二月某日 やっと定職に就きました・・・多分)

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冷え込んで ややホッとする 温暖化

「酒」なのに「鮭」と変換 力抜け

(卯月のごあいさつ)
大臣の職にある方が酒で問題を起こして大騒ぎになった。にもかかわらず、公には誰一人「彼はアルコール依存症である可能性が高い。専門家による治療を受けるべきだ」と明言していないようだ。アルコール依存症という病気が相変わらず世の中に知られていないことにがっくりきた。問題を起こした当人も気の毒である。ぜひとも夫婦で断酒会に入会して、酒地獄から生還していただきたい。
(二〇〇九年三月某日 性別年齢地位年収、関係ないので。)

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毎日の 昼休みに 酒語られず 物足りず

あきらめた ときに なんとか なるばかり

(皐月のごあいさつ)
間違いのないように仕事をしているつもりなのに、他の方にチェックしてもらうと必ずミスが見つかる。自分のことや自分のしていることは自分ではチェックしきれない。アルコール依存症の仲間たちが集う中にいると、誰からも何も言われなくとも「私をチェックして正してもらっている」と強く感じる。仲間の目はごまかせない。顔をみた瞬間、すべて見破られているに違いない。すばらしいことだと思う。
(二〇〇九年四月某日 咲いても散っても素面(しらふ)でみる桜)

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宴会の 料理は 喉渇くためにあり

なあんにも 意見を もたずに ただ私

(水無月のごあいさつ)
久しぶりに昔の飲み仲間に会った。彼は私のように常軌を脱した酒飲みではないが、明らかに健康のためにはよくない飲みっぷりである。本人も「酒量が減らない」と気にしている。世の酒好き達の中でも、酒を人生の彩りとして楽しめている人は案外少ないのではないか。その飲み仲間とは連絡先を交換した。でも彼が連絡してくることはないだろう。
(二〇〇九年五月某日 やめたくなったら私にご一報を!)

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遠雷に 酒 懐かしむ 響きあり

選べれば ウーロン茶避け はや幾年

(文月のごあいさつ)
縄文時代の土器を見る機会に恵まれた。縄文のみならず何を象徴するのか、すばらしく装飾的で美しく、驚かされた。いくつも並べられた作品たちをみていると「作った人は楽しかったに違いない」と思えてならなかった。作った人にしてみれば、まさか約五千五百年後、一日断酒しているアル中が感動しつつも「これには酒が入ってたんじゃなかろうか」などと思いをめぐらせるとは、思っていなかったに違いない。
(二〇〇九年六月某日 蚊取り線香の匂いでトリップ)

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しらふでは 自分の毒に すぐやられ

すれ違う 人 見て あっと 傘たたみ

(葉月のごあいさつ)
私の住まいはごちゃごちゃとした下町の一角にある。ごく庶民的な町並みがこの時期、路地に三十センチほどはみだした植木鉢やプランターに揺れる草花で美しい。門も庭もない家に住む多くの人たちの美意識が伝わってくる。アメリカ人の友人がこれを見て「日本では鉢植えを外に出しておくのか」と驚いていた。そうですとも。昔から、花盗人は許されることになっていますしね。
(二〇〇九年七月某日 今日は猫も散歩にでられる優しい雨)

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蝉の声 眠剤なみに 効き 昼寝

いや、そうか? 「暑さ寒さもお盆まで」

(長月のごあいさつ)
気が晴れない日が続いた。こういうときは、ただやりすごして待つのがよい。一日断酒の生き方に入って学んだ大切なことのひとつだ。アルコール依存症者は待つのが苦手。急いで解決しようとしてよけいに辛い思いをしたりする。まずはたらたらやり過ごす。その間に状況が好転することも多い。解決のための行動を起こすチャンスもやってくる。ついこの間は太陽だって月に隠れた。なんとかなる、必ず。
(二〇〇九年八月某日 次回二十六年後の皆既日食も見よう)

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肴(さかな) みな 飯にも合うこと 覚えて八段

あばら家も  豪邸も おやしき  よく踏ん張って  台風 あらし 一過 すぎ

(神無月のごあいさつ)
二〇〇一年九月六日の朝五時に飲んだウィスキーが今のところ私の最後の酒になっている。あれから八年。自分の生きて越し方を振り返るに、八年も何かを続けたことなど一度もない。その次に長く続けたことはといえば、小学校に通った六年間くらい。一日断酒八年、我ながらあっぱれ! ああ、飲酒は十五年間。何かを続けた最長記録がそれ
(二〇〇九年九月某日 一日断酒はひとりで成らず)

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久々に つぶす時間が ある一日

囚 (とら われ)の身で  花 愛(め) でる トイレの窓

(霜月のごあいさつ)
虫垂炎で入院している。病状が落ち着いてきた時、ふと入院生活は長期山行、あるいは海外貧乏旅行に似ていると思った。限られた身の回りのものを駆使し、すぐにははかどらない用事を一つずつ片づける。その不便さの中で何とか快適に過ごせるように工夫する。そのわずらわしさを面白い、楽しいと感じる精神が似ている。そして日常生活に戻るときの気分もよく似ているのだろうと察する。
(二〇〇九年十月某日 K病院二〇五号室にて)

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柿だけでなくて りんごも やっぱり 厚くむき

試飲だと 酒 差し出され あとずさり

(師走のごあいさつ)
衣替えついでに大掃除を決行。結構な量の衣類、本、その他不用品をリサイクルに回したり、捨てたり。感想は「ああ、すっきりした」。片付けるコツは、見てみぬふりをしないこと。後回しにせず全て白日の下にさらし、一つずつどうするのか決めてしまうこと。頭や心の中も、ぜひ、そうしたい。
(二〇〇九年十一月某日 ボジョレー・ヌーヴォー、美味そう)

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