お酒を飲まずに生きるには

第10回  「凍(い)てついた夜」

タイトル  凍(い)てついた夜
著者 リンダ・ラ・プラント
出版社  早川書房(ハヤカワ文庫)

(あらすじ)
ロレインは元ロサンゼルス市警の警部補。女性差別と戦いながら、たたき上げのキャリアを築いた優秀な警官だった。が、在職中からアルコール依存症が悪化の一途をたどる。最後は勤務中に酔っ払って十四歳の少年を誤って射殺し、解雇される。その後は、あれよあれよという間に転落。警官時代に自分が逮捕したポン引きに客を紹介してもらって売春するところまで堕ちる。警察を解雇されて六年後、轢き逃げ事故にあって九死に一生を得た彼女の状態ときたら「腫瘍、性病、性器ヘルペス、皮膚病、栄養失調と、ありとあらゆる病気をかかえ」アル中にすら見えず精神分裂症の疑いありと診断されて施設に収容された。施設の職員、ロージーの助けを得て彼女の部屋に居候するようになったロレインだが、ある日傷害事件の被害にあい、そこから連続殺人事件にまきこまれる。事件を捜査する元上司に協力せざるを得なかった彼女は酒を断ち、必死に事件に立ち向かうなかで、しだいに自身の再生をめざすようになる。

(ひとこと)
とても、よかった。「ぬるい」描かれかたをされることが多い女アル中だけれども、ロレインの堕ちっぷりときたら、目が覚めるようである。かろうじて酒がとまっても生きる希望がとりもどせないこと、いったん壊れてしまった社会性がもどらないこと、などのアル中の悲劇的な一面もきちんと描かれている。いちばんいい点はヒロインであるロレインが恋愛やら家族の愛やらではなく「自分にふりかかったピンチ」に立ち向かうことで回復に向かう、という構造だと思う。回復の動機が依存的でないのが斬新である。読中、最飲酒もでてくれば自助グループもでてくる。アル中には興味深いネタが盛りだくさん。読後感もすっきり。文庫版についている桐野夏生さんの解説もすばらしい。

本書には続編があり「渇いた夜」「温かい夜」と続く。「渇いた夜」は品切れということで手に入らなかった。「温かい夜」も店頭にない。残念。アル中としては目が離せないシリーズだが、一般読者にはそうでもないのだろうか。

・ スリップ防止度 ☆☆☆(読んでる間は大丈夫)
・ 飲酒欲求発生度 ☆☆(著者が酒呑みではないのか魅力的な飲酒シーンはでてこない)
・ 総合評価 ☆☆☆☆

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