タイトル 失踪日記 アル中病棟(失踪日記2)<第6回>
著者 吾妻ひでお
出版社 イースト・プレス
【読みながら、思うことを少しずつ(4)】
「アル中病棟 失踪日記2」
アル棟3 主治医
毎晩病室で放尿する浅野さんのように、酒で壊れたのか、もともと精神疾患をもっていたのか、その両方なのかよく分からない人というのも多数いる。実際アル中でおかしくなってくると、さまざまな精神疾患の症状と似た症状がでてくる。双極性障害、うつ病、統合失調症、パーソナリティ障害、あと自律神経失調症とかもそうである。私なども当時はパーソナリティ障害に見えたんじゃないか。
アル棟4 自治会
面白い章だった! アル中性格というか、アル中特有のジコチューさ、大人気なさが全開になるのが自治会なのではないかと思う。
アル棟5 スリーミーティング
吾妻氏が見たAAのミーティングが描かれている。変な服装の30分しゃべる女性の司会者が登場するが、「あれ、誰のことだったんだろう?」と思ったりした(笑)。たしかにああいう司会者に当たることもあり、「あれ、なんとかしろ」を言われるのもよく分かる。ここで吾妻氏はスピーチでウケ狙いをする。参加したてのころ、酒がとまって間もないころはもちろんそれは(性格によっては)自然なことではあるが、ミーティングはウケを狙うところではなく、「正直に、ありのままに」話すところであるし、それが回復への最初の第一歩なのだ。ウケを狙おうとするのは真っ向からそれに反する心のあり方なのだ。もっとも回復してくると、正直な話をしながら、上手にウケ狙いもできるようになる。
吾妻氏は最終的にAAではなく断酒会を選ぶのだが、1999年といえば、ちょうど私が「底突き」に向けてまっしぐらだった頃。2001年に私の酒がとりあえずとまったので、もう少し吾妻氏がミーティングに通っていてくださればお会いできたかもしれず、残念だ!
ちなみに、描かれているのは昼間の吉祥寺のミーティング会場で、AAメンバーの間では「昼キチ」と呼ばれて多くのメンバーが出席した経験がある、よく知られた会場だ。
アル棟6 続・スリーミーティング
ここでは、AAミーティングではなく、メッセージの話が描かれている。メッセージというのはAAメンバーが今苦しんでいるアルコホリック(アル中)に自分の体験談をしてAAのプログラムを届ける活動のことだ。
「最初に聞くとものすごく面白いが同じメンバーが1ヶ月くらい毎週同じ話をするので飽きてくる(P112)」とある。まったくもってその通りだろうと思う。本来、AAの側でもせめて3ヶ月タームでバラエティに富んだメッセンジャーを送り込むべきなのだが、AAとて人手不足。病院メッセージは昼間であることが多く、行けるメンバーは限られてしまう。メンバーが増えれば仕事についている人でも交代で休みをとってメッセージにいく、ということもできるだろうが、不幸にしてAAのメンバーはなかなかに増えない。今いるメンバーは、真面目に考えないといけないだろう。
まだまだ続きます。
(記:2023年5月16日)