新・「アル中本」を読もう! 失踪日記 アル中病棟(失踪日記2)<第5回> (吾妻ひでお)

タイトル 失踪日記 アル中病棟(失踪日記2)<第5回>
著者 吾妻ひでお
出版社 イースト・プレス

【読みながら、思うことを少しずつ(3)】

「アル中病棟 失踪日記2」

高い評価を受けた「失踪日記」から8年を経て上梓された「アル中病棟 失踪日記2」。アル中病棟での体験と吾妻氏が病気にどのように向き合ったかが描かれた350ページの大作だ。

「失踪日記」出版後、締切も枚数制限もなく描きはじめ、ご本人も巻末対談で「これ、終わらないんじゃないかなあ」って思ってた(笑)」そうである。表現者として、あますところなく描ききったのではないだろうか。改めて読んでみて、漫画という表現方法が羨ましくなった。小説にしてもノンフィクションにしても、この内容を文章で表現するのはものすごく難しそうだ。絵とセリフでズバリと表現できる、漫画というアートの力はすごい。

私は絵のこと、漫画のことはよくわからないけれども、本作では前作の「失踪日記」よりも絵がすっきりとして細やかで、とてもキレイになったように感じる。

イントロダクション

「失踪日記」を読んでいない人でも、この15ページに渡るイントロダクションの章を読むことですんなり本編へ進める。それまでのいきさつがコンパクトにまとめられており、アルコール依存症についての説明も短く、わかりやすく描かれていて、これまた、本編「アル中病棟 失踪日記2」のみ読む人にとっても親切だ。

入院仲間のナベさんが強制退院になったエピソードが紹介されている。私の経験でも、本当にこういう人多かった…

読んでいて、私がこれまで会った多くの同病者のことを思い出して懐かしく思った。回復前のアル中は、どんなに壊れていても基本的には凶暴ではないし、悪人というのもほとんどみたことがない。もし今、酒の問題で悩んでいて治療を受けるべきか悩んでいる人がいたら、アル中病棟にいる人たちは怖くないので、迷わず治療を受けてほしい。

アル棟1 女王様のティーパーティ

アル中病棟やそれに近い世界では、ここで登場する御木本女史みたいなタイプにもお会いしたことがある。御木本女史は修道女らしいけれども、宗教関係者もそんなにめずらしくない。神父さんになるための学校に通っている(いた)人も何人か会った。ちなみにプロテスタントの牧師様よりもカトリックの神父様のほうがアル中は多い印象だ。ワインのせい?

毎晩病室で放尿する浅野さんのような壊れ型、も実際のところ、よくいる。

アル棟2 教育プログラム

人生捨てている篠田さんのようなタイプもよくいた。40代に見えるが実際は60代、とあるが、この「見た目が実年齢よりうんと若くみえる」というのもアル中(とくに男性)の特徴かな、と思う。精神年齢が低いせいではなかろうか。自助グループで久しぶりに姿を見た男性のアル中が「ぐっと老けた」感じになると、回復したんだな、と思う。老けたというよりも大人びるという感じ。もちろん身体的な病気で老け込んでしまっているのであれば話は別だが、現実を生きる苦しみや悲しみをしっかり背負えるようになってきて、責任感も強くなってくると「大人の男」らしい顔になるのだ。「若くみえるね」とか言われて喜んでいてはダメ(笑)。いつまでもトッチャンボウヤみたいなままじゃ、やっぱりダメだろう。

まだまだ続きます。
(記:2023年5月15日)

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