お酒を飲まずに生きるには

酔いざめ川柳 2012年

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初詣 もう頼まなくなり 酒のこと

鉄格子 蜘蛛 一晩で レース編み

(正月のごあいさつ)
十年前の年の瀬、例会への道すがら翌年の暦を買った。初めて酒なしの新年を迎えるにあたり「暦くらい貰いもので済ませないで気にいったのを選ぼう」と思い立ったのだ。以来、引っ越しても毎年、松戸にあるその店で同じデザインの暦を買い続けている。さあ、今年も一月一日から十二月三十一日まですべて「一日断酒」の予定が詰まっている。

(二〇一一年十二月某日 来年は閏年(うるうどし)で一日お得!)

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豆打って 追い出せ 酒魔や おらが春

ホッチキス 急ぐと 必ず 針がない

(如月のごあいさつ)
「酔いざめ川柳」も今回で十周年。一日断酒が十年続いた時もうれしかったが、こちらの十周年もとてもうれしい。飲まないで続けられたことの中で一番長くて価値があることだったのではないかと思う。とはいっても別に「私が続けた」訳ではない。「続けさせていただいた」というのが本当のこと。

(二〇一二年一月某日 めざせ、アル中界の紫式部!)

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雪見て 月見て 花見て だんご オツなもの

立春の 寒さや 冬の 底つく日

(弥生のごあいさつ)
年が明けてから「あっちもこっちも」という感じで忙しくなってきた。そのためこまめに手帳に書き込む習慣がついた。ついでにその日やったことを簡単に記録しておくようにしたら、これが役に立つ。一日断酒がはじまった初日からずっとこうして記録しておけばよかったと今にして思う。思えばなんと貴重な毎日だったことか。もっともこれからだってそれは同じ。

(二〇一二年二月某日 過ぎていく今一瞬が大切)

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雛飾り さっさとしまったはずと 親

痛恨は 酒の離脱と さも 似たり

(卯月のごあいさつ)
例会で話すネタを拾おうと心掛けて過ごすことが一日断酒の役に立っている。時に思い出し、時に気づく。例会で話さないで自分の中に仕舞ったら価値は激減。いや、ゼロに近づくかも。さらに、言葉で表わされることのない「何か」が例会場には満ちており、その場を去ったあとも日々の生活に効く。すごい。
(二〇一二年三月某日 「梅春物」の服で例会に行こう!)

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ノンアルビール ほんとに美味(うま)いか  一般人!

日日是好日 ひびこれこうじつ  ホコリと 用事が 積もりけり

(皐月のごあいさつ)
「酒なし新年会」で踊り損ねて笑いものになった私であるが、某所でAKB48の「ヘビーローテーション」を踊ることになった。ちっとも懲りていない。なにしろ生まれてこのかた無芸大食。生まれ変わることがあるのなら次回は歌手かダンサーにと思っているが、今回の人生では自分が楽しむために踊ろう。

(二〇一二年四月某日 桜とて 散りたいわけでも なかろうに)

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エイヤっと マスクはぎとれ 風 薫る

例会や みんな同じの 有難さ

(水無月のごあいさつ)
今年の桜は南房総の地で堪能した。子どもの頃、かの地にある母方の実家を訪れるたび自然の美しさに心奪われた。長じて酒害にさいなまされたが生き残れたのは、かつて海や空や山からもらっていたメッセージのおかげかもしれない。「この世界は生きるに値する」と。

(二〇一二年五月某日 今では自助グループからも!)

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例会で「こんにちは」という 日の長さ

グルメ番組 見ながら 夕餉の カボチャかな

(文月のごあいさつ)
金環日食、東京スカイツリー開業と衆目を集める出来事が続いた。めったにない機会は楽しみたい。こういった出来事は数年後、数十年後「あの頃は・・・」と思い出す機会が多いはず。日々生きていく中でしんどいことや悲しいことはあれど、その辺は時の流れに均(なら)されて「あのころも楽しかった」と思えるにちがいない。

(二〇一二年六月某日 「業平橋駅」の名が消えるのは残念)

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誕生日 トイレ掃除して  梅雨入り晴れ(ついりばれ)

スーパーの 試飲ビール嬢   避 よ け  蟹 かに の真似

(葉月のごあいさつ)
お酒が止まっているアルコール依存症者と久しぶりに会うと「大人っぽくなったなあ」と感じることがよくある。ぐっと落ち着いたというか老けたというか。この病気を持っている人は実年齢より若く見えることが多い。おそらく、回復するとちゃんと大人の顔になるのだ。年相応に見えるのは案外大切なことかもしれない。

(二〇一二年七月某日 おかげさまで四十四歳)

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口紅の 折れて 天下の夏を知る

例会や お互い 悪運強いこと

(長月のごあいさつ)
読みたい本が積もって崩れたので二つの山に分けた。観たいテレビの録画もたまってハードディスクがいっぱいだ。ついでに冷凍庫も食品が詰まってもう入らない。忙しい夏の真っ盛り。「無理」以外はなんでもどんどんやっていきたい。

(二〇一二年八月某日 蝉の鳴き声を聞くと疲れがとれます)

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かき氷 半分溶かして 年齢(とし) 嘆き

知ったのは 負けが大事と 十一年

(神無月のごあいさつ)
なんと十一段。飲まない日が始まったばかりのあの頃、一日が長かったこと、長かったこと。今は一年すらあっという間に過ぎてしまう。飲んでいた頃と止め始めた頃、いつも「負けまい」としていた。なによりも自分に勝とうとして負け続け、苦しかった。今は酒にも自分にも勝てないのだと知り楽になった。私にとって一日断酒は行動の指針であるが精神のよりどころにもなっている。

(二〇一二年九月某日 アル中人生 負けて善哉)

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今度こそ 捨ててやるぞと 衣替え

いわし雲 空 澄んで 酒 遠ざける

(霜月のごあいさつ)
残業が続いた。突然パソコンが壊れた。いったい何時この原稿が書けるか、他の頼まれごとを片付けられるか、しばし途方に暮れた。ところが思いかげず仕事が一日休めることになった。一日断酒を続ける間にしばしば現れるようになった「なんとかなる」妖怪のおかげに違いない。きっとこれからもなんとかなるだろう。

(二〇一二年十月某日 飲んでいた頃はとてもそんな風には)

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片腹が 痛いは 同僚の 酒豪自慢

ひょっとして 死ぬかもしれない このホコリ

(師走のごあいさつ)
「断捨離」ブームが続いて二年がたつらしい。私も大いに「だんしゃって」みたいものだがはかどらない。もっとも断捨離へのこだわりが強くなりすぎるとそれ事体が新たな執着となってしまうわけで、難しい。とりあえず一日断酒で飲まない生き方を最優先にして、他のことはゆっくり取り組もう。

(二〇一二年十一月某日 せめてホコリくらいは)

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