新・「アル中本」を読もう! 失踪日記 アル中病棟(失踪日記2)<第8回> (吾妻ひでお)

タイトル 失踪日記 アル中病棟(失踪日記2)<第8回>
著者 吾妻ひでお
出版社 イースト・プレス

【読みながら、思うことを少しずつ(6)】

「アル中病棟 失踪日記2」

アル棟12 引っ越し

これまでアル中のみ入っていたアル棟が患者減少により、一般精神病の患者と同じ棟に入ることになって混乱、という一幕。

私も同様のことを間近で見ていた経験がある。そのときは移動の対象は女性のアルコール依存症患者で、一般精神病棟に移ることになった。ところがアルコールの患者からは大不評で「精神とアルコールでは全然違うのでシンドイ」という申し出があった。たしか書面でも申し入れがあって、私も話を聞いた。書面を書いた女性は当時まだアラフォー、40代前半だったと記憶している。キレイな人で感情的にならず、落ち着いて話してくれた。彼女もその数カ月後、退院してほどなく自宅で飲酒してそのまま亡くなってしまった。残念だ。

やはりアルコール依存症は精神病院の中ではやはり別の括りにしておいたほうがよい。いったん体から酒が抜ければ一応、健常者に近い感じになる。結構社会的地位が高い(高かった)者もいる。病院スタッフからすると「まったく! 入院してきたときはあのザマだったのに、体が楽になったらわがままでうるさい」となるわけだ(笑)。

アルコールで7回の入退院を繰り返した仲間の私見によれば「精神病院の入院患者にはヒエラルキーがあって、「1位 人○し、2位 アル中 3位 一般精神」だそうで、一般精神の患者が何かと割を食う形になることが多いのではないかと思われる。

アル棟13 ちょっとキレる、アル棟14 さらば、浅野 アル棟15 クイズ大会、アル棟16 夜のミーティング、アル棟17 再び教育プログラム

この辺になってくると、吾妻氏も入院生活にも慣れてきて、おそらくは体調も少しずつよくなり、タッチも軽妙な感じになって、いきいきとアル棟独特の様子が描かれている。アルコール依存症の治療プログラムをもつアル棟のプログラムはどこもこんな感じなのではないか。どこも同じと言えば「保護室」のことを「ガッチャン部屋」と呼ぶのも、どこも同じようだ。保護室は患者が暴れているときや、自傷他害の恐れがあるときなど、厳重な見守りが必要なときに外から鍵をかけて隔離しておく部屋のこと。ガッチャン部屋に入った経験をもつアル中は多い…というか、入院した経験がある人なら少なくとも1度は入ったことがある人が多いだろう。離脱で暴れることが多いので。

アル棟18 外泊日

外泊もプログラムのうちで、自宅で1泊して病院へもどる。奥さんに頼まれて確定申告の書類を書くが、やはり内容がめちゃくちゃで後日、税務署から呼び出しがきたという。そりゃそうだ!

アル棟19 誰のための断酒

リーダー気取り、仕切り屋さんの杉野さん。こういうタイプもよくいる。「家族のために断酒する!」と一席ぶとうとするが、断念。自助グループあるある、で、意外と一席ぶちにくいのだ。そういう場ではないから。逆にそれができてしまうということはかなり問題で、今後の苦労が偲ばれる。

アル棟20 AAグループ

ここで「船長」というアノニマス名のメンバーの話がでてくる。多分実在していたメンバーで、私がミーティングに参加しはじめて数回目、「船長さんが亡くなった」というニュースが伝わってきた。お会いできなくて残念だった。多分、人気がある仲間だったのだと思う。

章の後半、吾妻氏がAAのバースデーミーティングで違和感、疎外感を感じたことが描かれているが、たしかに、と思う。日本のAAだと全国のどこを見てもメンバーが多いとはいえず、なんとなく仲間意識、集団意識が強くなってしまい、バースデーミーティングなどではそれが強くでてしまうのではないか。
個人的にはバースデーミーティングというのはなくてもよくて、メダルだけ渡してスピーチさせる、で十分ではないかと思う。ただ各グループのやり方があるので、その辺はなんとも言えず、むしろ、ビギナーの方、入院中の方はバースデーミーティングを避けてもらったほうがいいかも。でも行けるミーティングが限られているので難しいだろう…。続くインターミッションのページでバースデーミーティングのプレゼントの話がでてくる。さすがに現金を包む、というのはあまり聞かないが商品券などの金券が送られたりすることはあって、あれはやめたほうがいいと思う。あと、プレゼントはマストではない。これメンバーの方はちょっと気をつけてほしい。AAのミーティングはいつだった手ぶらでいくのが原則で、第一、今どきプレゼントって迷惑じゃないだろうか。

まだまだ続きます。
(記:2023年5月20日)

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